2017年、NHKが発達障害について1年間かけて特集していくことを発表した。公式サイト「発達障害プロジェクト」などから事前情報をまとめ、当事者として考えたこと、関連記事などを記しておく。
NHKの発達障害特集についての事前情報まとめ
NHKが2017年5月より1年間かけて番組横断的に発達障害について特集することを発表した。これは「発達障害プロジェクト」と名付けられている。
公式ページがちょっとグラフィカルすぎて私にはわかりにくかった。当事者の人や関係者にもわかりにくいと感じる人がいそうなので、以下、自分用のメモの意味も込めて簡素なテキストリンクで重要そうな情報を整理しておく。
発達障害プロジェクト公式ページ
発達障害プロジェクトの公式ページはこちら。
発達障害プロジェクト http://www1.nhk.or.jp/asaichi/hattatsu/
5月21日 21:00〜 の生放送「NHKスペシャル 発達障害」への投稿フォーム
投稿フォーム|発達障害プロジェクト https://www1.nhk.or.jp/asaichi/hattatsu/toukou/apply.html
こちらで事前に集めた体験談などを、21日のNHKスペシャル生放送中に紹介するとのこと。当事者や周囲の人の困りごと、伝えたいこと、実行している工夫などを集めている。
5月21日Nスペ終了後のライブストリーミングはここで見れる
21日のNHKスペシャルの生放送終了直後から、こちらのURLでネット限定のライブストリーミングによる「延長戦」を視聴することができる。
ライブストリーミング放送 | 発達障害プロジェクト http://www1.nhk.or.jp/asaichi/hattatsu/#video
※リンクが効かなかったら申し訳ない。その場合は発達障害プロジェクト公式ページからクリックで辿ってほしい
これはとても盛り上がりそうだ。NHKもSNSをうまく利用するようになってきた。宇樹もできればTwitterから参戦したいと思っている。
「発達障害プロジェクト」2017年5月分放送予定・番組表
「発達障害プロジェクト」は1年間かけて行われるが、皮切りの2017年5月だけでも複数の番組で5つの特集が放映される。関係者はレッツ録画予約!
5/21 (日) 総合 夜9時
NHKスペシャル「発達障害~解明される未知の世界~」5/22 (月) Eテレ 夜8時
ハートネットTV「弱点を笑い飛ばす 発達障害の漫画家・沖田×華」5/23 (火) Eテレ 夜8時
ハートネットTV「もうひとつの居場所 -発達障害の人たちが集うサッカークラブ-」5/24 (水) 総合 朝8:15
あさイチ「自分の苦手とどう付き合う?」5/27 (土) Eテレ 夜11時
ETV特集「“いるんだよ”って伝えたい ~横浜・特別支援学級の子どもたち~」
私が特に期待しているのは皮切りの21日21時からのNスペ。発達障害の人が体感している感覚過敏的な世界やビジュアルストームなどを、一般の人に最新のVR機器で体感してもらう試みなどが詳しく放映される模様だ。
感覚過敏のことは当事者のひとりとして切実に理解してもらいたいと思っているので、詳しく扱ってもらえるのはとてもありがたい。当事者・周囲の人からの投稿やSNSでの反応も大きく取り入れる生放送で、NHK側の「ムーブメントを起こそう」という本気が感じられる。
発達障害プロジェクト公式ページ「『困りごと』の取扱説明書」への投稿フォーム
発達障害プロジェクト公式ページでは、「みんなで作る発達障害の”トリセツ” 『困りごと』の取扱説明書」というコーナーを開設し、当事者や周囲の人から困りごとや対処法などを募集している。現在徐々に投稿がアップされていっているところ。宇樹も投稿してみた。
投稿フォーム|発達障害プロジェクト https://www1.nhk.or.jp/asaichi/hattatsu/toukou/index.html
※こちらのフォームは公式ページ上のトリセツ専用。5月21日のNスペの放送への投稿はできないので注意。
ハフポストによる「発達障害プロジェクト」についての記事
番組チーフプロデューサーによる番組作成の意図などについて取材をもとにまとめてある。
NHKが発達障害を1年間特集 「当事者の生きづらさ、少しでも減らせたら」
「認知」から「理解」のフェーズへの深化
NHKでは、いままで誤解されがちだった発達障害についての誤解を解き、当事者や家族を少しでも生きやすくすることを目指している。
発達障害をめぐっては、2015年にモデルの栗原類さんが、NHK『あさイチ』の生放送中に自らも発達障害であることをカミングアウトし話題になった。同番組ではこの回を含め発達障害を3度特集しており、どの放送でもメールやFAXが通常の2倍以上届くなど、視聴者から大きな反響を得た。
同時に障害の実情が誤解されている実態も浮き彫りになり、今回の特集を手がける齋藤真貴チーフ・プロデューサーが「より多くの人に、当事者の声や最新の研究知見を伝えたい」と他番組の担当者に持ちかけた。
齋藤チーフ・プロデューサーはハフポスト日本版の取材に対し、「発達障害の当事者やご家族には、周囲の無理解で悩む人も多い。1年間のプロジェクトを通じて、当事者や家族に少しでも『生きづらさ』が減ったと感じてもらえたら」と狙いを語った。
当事者のひとりとしては、この動きは大歓迎だ。
こちら↓の記事にも書いているが、いままでコミュニケーション障害や落ち着きのなさなど精神面に注目されがちだった発達障害が、2017年に入ってから感覚過敏にも注目した報道がなされるようになった。
これは、「発達障害というのはただの変わり者だとか気にしすぎだとか、精神面のみの問題だと思っていたが、どうやら身体にもいろいろ困りごとがあるようだぞ」というふうに、発達障害の身体面の症状・特性に世間の注意が向いてきた表れだと思っている。
こちら↓の記事にも書いているが、私は「発達障害もある意味で身体障害」と考えているので、こういった身体面への注目の動きはとてもありがたい。
第1回:知ってるようで知らない… 発達障害者ってどんな人?│mazecoze(マゼコゼ)研究所
この動きはつまり、日本において「発達障害という言葉の認知がひととおり行き渡った」ということを示しているのだと思う。
いままで世間では「発達障害というものを名前だけでも知ってもらおう」という「認知」のフェーズだったのが、「ではその発達障害というのは一体どういうものなの?」という「理解」のフェーズへと深化した。こういうことだろう。
発達障害仲間のくらげくんも、私と同じように「発達障害は身体の障害」とする記事を書いている。
ほかの当事者の中にも、日常生活や就労などにあたって、コミュニケーション障害などの精神面の困りごとよりも、感覚過敏などの身体面の困りごとで障壁を感じている人は多いと思われる。
宇樹による発達障害者の身体面の困りごと関連の過去記事紹介
この記事を読みに来てくださる人は発達障害者の身体面の困りごとについて興味を持ってくれていると思うので、関連記事を紹介しておく。たくさんあるが、目の止まったものだけでも読んでいただけると嬉しい。
発達障害者の感覚過敏関連の過去記事
↓自分の持つ感覚過敏について思いつくかぎり列挙した記事。
↓発達障害者の聴覚過敏について自分の経験も含めてまとめた記事。聴覚過敏が体感できる動画も紹介している。
↓自分の持つ薬剤過敏傾向について書いた記事。発達障害者にはどうも薬剤にも過敏な人が多いらしい。
↓視覚過敏でPCの光がまぶしく感じたりする人のための対処法。視覚鈍麻についても触れている。
↓触覚過敏で服の選択肢が狭い人のための、感覚的にもファッション的にも許せるワードローブの揃え方。
↓触覚過敏で合う下着になかなか出会えない人のための下着の選び方、工夫の方法。
発達障害者の不定愁訴関連の過去記事
↓若い頃、発達障害の特性でたくさんの不定愁訴を抱えていたが、発達障害であることに誰も気づかなかった。そのため「具合が悪いのは自分がだらしないせいだ」と思い込んだ(周囲からたくさんの叱責などを受け続けたことから)。結果的にニセ医学にだまされ、心身ともに追い詰められていった記録。医療業界の方へのお願いも付記している。
↓発達障害者と片頭痛の関係について個人的な仮説をまとめている。
↓発達障害者の不定愁訴は全身の筋肉のバランスを整えるとマシになるかも? という記事。
↓心身の疲れが不調に結びつきやすい発達障害者は定期的なエクササイズを取り入れるとベストという記事。過集中をおさえて生産性を向上するための時間管理術ポモドーロ・テクニックも紹介している。
↓天気に体調を左右されやすい人向けのストレッチ・軽いトレーニング方法を説明した記事。
理解が広がりますように
今回自分で過去記事を漁っていて、ずいぶんたくさん発達障害の身体面の困りごとについての記事を書いてきたものだなと驚いた。
今回のNHKの特集の動きは心底応援している。発達障害は身体もこんなにつらいのだ、甘えやわがままや気合の足りなさではない、ということが、非当事者だけでなく、当事者本人にも理解されていくことを、心から祈っている。
きっと、そうであってこそ当事者は生きやすくなり、特性・症状のコントロールやQOLの向上に向けてに最短距離で歩めるようになるからだ。