【体験動画あり】発達障害者の聴覚過敏の実例とその対処方法【おすすめデジタル耳栓】

この記事の所要時間: 1143

発達障害者の聴覚過敏の実例を紹介し、宇樹がとっている対処方法について解説する。可聴域(聞こえる範囲)の調べ方や、聴覚過敏の疑似体験動画、おすすめの耳栓、コミュニケーション上のTipsなどの情報も。

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聴覚過敏を指摘されたことから発達障害の自覚へ

発達障害を自覚したのは30ぐらいのときだった。
(自覚前夜までのストーリーについては別記事に書こうと思う)

あまりに不定愁訴が多かったので、西洋医学的なエビデンスにもとづいて治療をしてくれるという進歩的な鍼灸治療院に通い始めたのだった。そこの最初の問診で、先生が突然変わったことを言う。

「宇樹さんもしかして耳が聞こえすぎなんじゃない?」

小さな頃から自分の耳が聞こえすぎだという自覚はあったので、そうだと思うけどどうしてなのかと訊いてみると、こんなことを言う。

「普通の人だと聞こえないはずのエアコンのモーター音に反応して声が大きくなったり小さくなったりしてたんですよねぇ」

えぇえええーーー!?

そのあと続けて彼女が言ったのはこんなこと。

  • 私は資格上、あなたに診断を下すことはできないのでこういう言い方しかできないけれど、こういう症状のことを一般に聴覚過敏という。聴覚過敏は感覚過敏というものの一種。それで、IQに問題はないけど感覚過敏がある人のことを一般に定義的には発達障害と言うことがある。発達障害っていうのは自閉症系の障害で、有名なのがアスペルガー症候群とか。ちょっと調べてみて
  • 可聴域(聞こえる音の高さ)が調べられる簡易的な無料のPCソフトがあるから調べてみるといい

えぇえええええーーー!? となって、それからものすごい勢いで調べた。そうしたら、自分がどう少なく見積もっても2万ヘルツ以上の高音域の音が聞こえているらしいことがわかった(30歳当時)。

そして、「発達障害」とか「アスペルガー症候群」、「発達障害 感覚過敏」というキーワードでググッてみると出てくる出てくる、自分のドッペルゲンガーのようなケースが。大学まで成績優秀で通り高学歴に至ることも多いが、人間関係でつまずくことが多く本人は困り感を抱えている。新卒の就職時につまずき、以降ひきこもりなどの不適応を起こすケースが非常に多い、などなど……

あれもこれも聴覚過敏のせいだったのか!

聴覚過敏があると聞いて、氷解した長年の謎も多かった。

  • 耳がやたら聞こえてるはずなのにしょっちゅう声がデカいと指摘される
    →周囲にとっては「静か」と体感される環境でも、私にとっては「騒音下」で自分の声も聞こえないから、みんなも聞こえないはずと思って必死に声を張り上げていた… 耳の遠い人が声が大きくなるのと同じ理屈
  • 耳がやたら聞こえてるはずなのにしょっちゅう人の話を聞き返す
    →常に騒音下で人の声を聞いている状態だから。音情報の取捨選択ができず、いつも混線したラジオを聞いているような感じだと思われる
  • 喫茶店などの店から外に出ると「胸がすっとする」
    →空気が悪いのだと思っていたが、店内の騒音に耳が疲れていただけのことだった
  • 人混みに行くとやたらとすぐに疲れる
    →五感、とくに耳が疲れやすいからだった
  • 音楽が好きなのになぜかコンサートなどに行ったり自分でプレイする習慣がない
    →ものの1時間聴いただけで耳が疲れるから
  • 成人すると聞こえなくなると言われるモスキート音が30になっても聞こえていた
    →モスキート音は2万ヘルツよりも低い音だから聞こえるのも当たり前…

「謎が解けました。あなたには間違いなくコミュニケーション障害があります」

この調査結果を、第二新卒で勤めた職場にうつとパニックで通えなくなって以降5年以上通っていた精神科の主治医に報告に行ったら、主治医は膝を打った。「ようやく謎が解けました。どうもすっきり診断のつかない人だと思っていたんだ」

「どういうことですか?」

「あなたのことは、統合失調症の病前性格、つまり 境界性人格障害 境界例(ボーダーライン)と見立ててたんです。そのうち発病するかもしれないと心配だったから面談を切らないでいたんだけれど、いつまでも発病しないし(w)、あなたはボーダーにしてはおとなしい。不思議だったんです。あ、ちなみに、統合失調症の病前性格とボーダー(境界例)はほぼ同一の概念です」

「なるほど。私のどういう部分がボーダーっぽかったんですか?」

「統合失調症の病前性格を診断するのに不可欠の要素として、『自明性の喪失』があります。これは、周囲にとって自明であることが本人にとって自明でない、ということ。つまり、みんなが言われなくてもわかっていることが、あなたは言われなければわからない、ということ。あなたには、明確に『自明性の喪失』があった。だからボーダーと見立ててたんですが、あなたの場合、この自明性の喪失は発達障害によるコミュニケーション障害から来たものだったんですね」

「なーるーほーどーぉ」

「私は発達障害が専門ではないので診断は出せないですが、あなたに感覚過敏があるのも、コミュニケーション障害があるのも間違いないし、発達障害があるというのもおそらく間違いないでしょう」

「私が今後、統合失調症を発症する危険性はありそうですかね?」

「おそらくないでしょうねぇ」

…というわけで、私はここから「わかった、そういう話なら私はもう手に職つけるしかなかろう。不定愁訴や感覚過敏があるならあるでそれを逆手にとれる職にしよう。静かな環境にいられ、裁量性が大きく、自分の健康管理にもプラスにもなる知識が身につけられて、通勤する必要がない、同じ対人支援職でも一対一でできるし筋力は必要としないもの… 立場も安定しており中身もしっかりしている国家資格がいい… 鍼灸師ダー!」となって、鍼灸マッサージ師養成の専門学校に入学。しかし入学の直後に実家から逃げ出すことになってやむなく退学、今に至る、という流れである。

※2016年2月21日補足訂正 
文中の「境界性人格障害」は私の側の記憶違いで、「境界例」の誤りであったようです。お詫びして訂正します。ご指摘くださった方々に感謝します。
またこの主治医は、私の認識では「誤診」は行なっていません。私は「彼は非常に有能で勘に優れた精神科医であったために、安易な断定(≒誤診)を行わず、疑いを挟んだまま私の診察を続けてくれていた」と認識しています。
証拠としては不十分かもしれませんが、彼から受けた投薬のうち向精神薬は、初診時から私が実家を離れるときまでの8年ほどの間、マイナートランキライザー(精神安定剤)に類するもののみでした。私は初回の面談から彼に大きな信頼を置いていました(詳細については機会があれば別記事に書こうと思います)。
不運だったのは、時代的・業界の構造的に、彼にたまたま十分な発達障害の専門知識がなかったということだけです(ネットで検索したところ、少ない情報から類推できるのは、彼の専門は青年期の精神障害らしい、ということです)。
さらに、当時と現在では「境界例」の概念自体が変わってきています。

これらの業界的背景の詳細については、下に引用するCookさんという方のTLをご覧いただきたいです。ツリーになっているので下の埋め込みツイートから元ツイートをたどり、ツリーを展開してご覧ください。

【聞こえる範囲の調べ方】
「可聴域チェッカ」、モスキート音動画の紹介

私が簡単に可聴域を調べるために使ったソフトはこちらのもの。PCやスピーカーの性能にもよるしあくまで目安にしかならないので、そこを把握したうえでページの説明をよく読み、自己責任で。

可聴周波数域チェッカ [masudayoshihiro.jp] 
http://masudayoshihiro.jp/software/mamimi.php

モスキート音(1.7万ヘルツ前後)が試し聴きできる動画。最初は低めの音から始まるが、音量注意。

【聴覚過敏の感覚がわからない人のために】
聴覚過敏ってどんな感じ?

どんな感じかわかってもらうために、いくつか疑似体験動画を紹介する。

聴覚過敏体験 人混み

ああーわかるわかる。疲れてるときとか具合悪いときだとこれが直接脳みそに刺さってくる感じで、私の場合はすぐに偏頭痛発作の引き金になる。私はいつもこんな感じなので、これが特に強調されてる音声なのかどうなのかがよくわからない。ただ、体調悪いときの人混みを思い出して体調悪くなりそうになるので怖くて長く聴いていられない。

というか、うしろで何か朗読してるなんて、言われないとほぼ気づかない。つらすぎる。定型さんは聞き取れるのだろうか。

自閉症スペクトラム(ASD)児者の聞こえ方を疑似体験してみる

発達障害者は聞こえすぎなだけでなく、音情報の取捨選択がうまくできないとも言われている。感覚器(耳)が拾った音を脳がすべてそのまま受け取ってしまうので、集中して聴きたい音に集中できない。

定型さんにはこう聞こえる、というサンプル部分は、めっちゃ聴きやすいやん超うらやましい、何その便利なミュート機能、と思った…

【聴覚過敏についての誤解】
「耳がいい」「音に関して才能がある」わけではない!

聴覚過敏によくある誤解が、「耳がいい」「音楽に天才的才能がある」みたいな誤解。

私も、「普通の人には聞こえない高い音が聞こえてる」とか言うと、半数ぐらいの人が絶対音感と混同しているような反応をしたり、「それはすごい! 便利だね! 音楽に才能を発揮できるかも!」とか言ったりする。

そもそも絶対音感自体も、音楽に使う以外の場面では邪魔な感覚でしかないし、聴覚過敏は音感とは関係のないものだ。しかも、私のように可聴域が広いわけではないのに聴覚過敏(音情報をソートできないなどの不快症状を感じる)だけある、という人も中にはいるようだ。

私は音楽が好きだが、音楽をプレイする側には回れないと思う。一度ヴォーカルをやろうと思ってバンドの見学をしてみたとき、あまりの音の大きさに自分の声がぜんぜん聞こえなくて辟易した。コンサートなどでも、たいていは音が大きすぎて耳がうわーんとなってしまい、楽器単体の音を聴き分けられない。聴覚過敏は基本的にはdisability(できないこと)であって、決してability(能力)やtalent(才能)ではないのだ。

もちろん、聴覚過敏を持っている人の中に、たまたま「耳がいい」人や、「絶対音感を持っている」人もいるだろうが。

【聴覚過敏の対処方法】
おすすめの耳栓、コミュニケーション上のTipsなど

高機能の耳栓 クオリネ

これは透明で目立たないし、会話が聞こえづらくなりにくかったり、音質があまり変わらないという特徴があるので重宝する。映画館やコンサートなどでかなり愛用している。難点は、ケースがコンパクトすぎて、なくすんじゃないかといつもヒヤヒヤすること。ADHDの人は何か工夫が必要そう。

キングジム デジタル耳せん

これはイチオシ。飛行機やバスなどの長距離移動時には手放せない。空調やエンジンなどのモーター音にあたる音をかき消すノイズを出してくれるしくみで、こういった邪魔な音だけがスッと吸い込まれるように消える感じ。ヘッドの背はオープンになっているので、会話にはまったく支障がない。

飛行機でつける際は、航空会社にもよるが離着陸のシートベルト点灯時は使わないように指示されることが多いのでそのときだけは我慢。

【2017年10月追記】ノイズキャンセリングイヤホンTronsmart S4

キングジムのデジタル耳栓を超えるノイズキャンセリングイヤホンが出た。装着に時間がかかりポケットが必要というキングジムのデジタル耳栓の弱点を解消している。

詳しいレビュー記事はこちらで書いている。

聴覚過敏持ちの私にとって、数年前に出たキングジムのデジタル耳せんは画期的な商品だった。しかし使ううちに、聴覚過敏持ちのニーズを微妙に満たして...

コミュニケーション上のTips

  • 「騒がしいところが苦手です」と伝えられる相手なら伝えておく
    →「静かなところに行きたい」とか言うと性的な意味(≒ホテル行きましょう)に勘違いされる場合があるので特に女性は注意しよう…(これ知らなかったので危なかった…)
  • 「ボリューム調整つまみが壊れてるからね」とあらかじめ言っておく
    →声のボリューム調整がうまくいかないことがあるけど悪気はないので、不都合があったら気軽に指摘してくださいということをあらかじめ伝えておくとうまくいくかも
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