なまはげ、どんど焼き、節分に似た祭りは世界にも! 新年〜立春ごろの世界の土着祭り

この記事の所要時間: 735

1月~2月ごろの初春に行われる、なまはげ、どんど焼き、節分といった日本の祭り。これらには実は、世界にも似たような土着の祭りがたくさんある。共通点やそれぞれの祭りの特徴などをまとめておきたい。

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なまはげ、どんど焼き、節分の共通点

春を迎える祭り

なまはげは大晦日から小正月(1月15日)の時期、どんど焼きは小正月の時期、節分は立春(2月4日ごろ)の時期に行われる日本の祭りだ。

これらの祭りに共通するのは、「春を迎える祭り」という点だ。

12月中の冬至を過ぎると、弱くなっていた太陽の光はだんだん力を増していく。世界は、最も暗く冷たい「冬の悪魔」のような存在が支配する季節から、温かく豊かな「春の神」のような存在が支配する季節へと移り変わっていく。

1月2月の頃はまだ空気は冷たいものの、人々は少しずつだが確実に高くなっていく太陽の姿に、人々は「春はもうすぐだ」という希望をかきたてられ、その高まりの中で祭りを執り行ったのではないだろうか。

願掛け、吉凶占い、来訪神へのもてなし、悪魔退治

この時期に行われる各地土着の祭りには、日本に限らず世界の広い地域のそれらにも多くの共通点がある。

この時期はまだ年が明けて間もなく、畑も寒さの中で眠っているような状態だ。こんな時期に行われる祭りには、「この春からの作物がたくさん実りますように」という願掛け、あるいは「この春からの畑仕事はどんな塩梅になるでしょうか」という吉凶占いの要素を含むものが多い。

また、古来から「季節の変わり目には魔/神が現れる」とされてきた。陰と陽、寒と暖など、世界を構成する要素が大きく切り替わっていく時期に、そのスキマに入り込むかのように、悪魔や神のようなものがやってくるのだ。魔/神は基本的に恐ろしい姿をしており、追い出し退治せねばならないものもあれば、もてなしをすれば機嫌がよくなって悪さをやめ、その後一年の吉凶を占ってくれたあげく、地域に幸運や実りをもたらしてくれるものもある。

上に挙げた要素のうち最も多くを持っているのがなまはげだ。なまはげは恐ろしい形相で「悪い子はいねが(≒悪い子は冬の魔の住む山に連れ去るぞ)」と言いながらやってきて、酒などによるもてなしを要求する。彼らは問答のなかで住民に去年までの畑仕事について尋ね、今後一年の作物について吉凶を占う。彼らを機嫌よくして山に帰すことが、住民にとっての大きな願掛けとなる。

いっぽう節分では、魔/神は対話の余地のない鬼として描かれ、基本的には家や地域から追い出し退治すること、それにより願掛けすることが祭りの中心となる。(ごく限られた地域で「鬼は内」とするところもある)

なまはげと、なまはげに似た世界の祭り

なまはげとは

なまはげとは来訪神(普段はいないものの、ある一定の時期のみ訪れる神)のひとつ。なまはげは大晦日から小正月の頃に恐ろしい形相で「悪い子はいねが(≒悪い子は冬の魔の住む山に連れ去るぞ)」と言いながら民家を訪ね、酒などによるもてなしを要求する。彼らは問答のなかで住民に去年までの畑仕事について尋ね、今後一年の作物について吉凶を占う。彼らを機嫌よくさせて山に帰すことが、住民にとっての大きな願掛けとなる。

Wikipediaより

なまはげは、春を祝う祭りの要素「願掛け、吉凶占い、来訪神へのもてなし、悪魔退治」がすべて入った、祭り好きの心をくすぐる祭りだ。

なまはげに似た世界の祭り

なまはげに似た世界の祭りは、実は非常に多い。なまはげは日本でも寒さの厳しい東北地方を中心とした祭りだが、世界でも特に比較的冬の寒さの厳しい地域に似た祭りが多いのは非常に興味をそそられる。寒さの厳しい地域の人たちにとって、春の訪れは古来から本当に重要なものだったのだろう。

どの祭りの魔/神も1月から立春のころに恐ろしい装束でやってきてひとしきり人々を怖がらせるが、彼らは結局のところ、来たる春を告げ知らせる春の恵みの神なのである。

日本人からすると、ヨーロッパの人たちは自分たちとまったく違った感性を持っているようにも思えたりするが、実はキリスト教伝来前の土着の素朴な信仰においては、日本もヨーロッパもよくよく似ているところがあったりするのだ。

チェゲッテ(ロイチェゲッタ) @スイス

コミカルながらそれなりに恐ろしい顔をしている。

チェゲッテ(ロイチェゲッタ)

ブショーヤーラーシュ @ハンガリー

動物の毛皮をまとい、とても暖かそう。

Wikipediaより

クケリ @ブルガリア

怖いような、もこもことしていて可愛いような。

Wikipediaより

ママーズ @アイルランド

等身大の藁人形みたいでけっこう怖い。

Prince Charles and Camilla visit Northern Ireland

ポワム祭り @ネイティブアメリカン

観光化を食い止めるため、ここ100年ほど写真撮影も禁止されているとか。

My ‘Kachina Dance’ experience

このほか、なまはげと似た要素を持つ魔/神の有名なものにヨーロッパ中部のクランプス(ちょっと大人でもキツいほど怖い)

Wikipediaより

アイスランドのユール・ラッズ(色とりどりのちょっと強面のサンタ戦隊という感じ)

気を付けて!?いよいよ今日からユール・ラッズが降りてくる!~アイスランドのクリスマス~

イタリアのベファーナ(これは珍しく怪物ではなく魔女)

イタリアの冬には魔女が来る!? ナターレを締めくくる「ベファーナ」とは? | たびこふれ

があるが、これらを迎える祭りはいずれも12月の冬至祭からクリスマスの頃に行われ、どちらかというと「冬を乗り切る」タイプの祭り魔/神であるように思われる。これら「冬を乗り切る」祭りの魔/神に共通する特徴は、「機嫌よくさせれば守ってくれたりプレゼントをくれたりするが、怒らせれば罰を与えたり山に連れ去ったりする」というものだ。

どんど焼きと、どんど焼きに似た世界の祭り

どんど焼き(左義長、さぎちょう)とは

どんど焼きとは小正月の時期に行われる火祭りのこと。その年に使った正月飾りなどを火に投げ入れ、その火で餅を焼くなどする。

その年の吉凶を占ったり願掛けをしたり、正月に迎えた神を送るなどして、正月の締めとする。名前は地域によりさまざまに異なる。

どんど焼きに似た世界の祭り

初春の火祭りであるところ、吉凶占いや願掛けの意味があるところに共通点が見いだせる祭りがいくつかある。

インボルグ @ヨーロッパ

ろうそくやかまど、たいまつ、焚き火の火を中心に祝う立春の頃の祭り。火が燃えたあとの灰を使って吉凶占いや願掛けをしたりする。ブリギッドという春の豊穣の女神/聖人を崇める日でもある。もともとはケルト民族の祭りだが、広がるにあたり祭りの形態はところによって大きな多様性をみせるようになった。

Wikipediaより

聖燭祭 @ヨーロッパ

2月2日の祭日。もともとはキリスト教の祭日(イエスがマリアとヨセフにより初めて神殿に連れて行かれた「主の奉献」の日)であったが、インボルグなど、ヨーロッパ土着の立春の祭りと習合している部分もある。一部の地域ではこの日にクリスマス飾りなどを燃やして冬の終わりとする。飾りを燃やして季節を前進させるところなど、どんど焼きにそっくりだ。

春を待ち望む

立春の頃は日本では最も寒い時期にあたるが、かえって「もう少しで春だ」という期待感の高まる時期でもある。最近は節分に豆だけでなく飴をまく習慣が出てきたり、もともと一部の地方の風習にすぎなかった恵方巻きが定着してきたりと、初春の祝い方にも多様性が出てきた。

それぞれなりの祝い方で、来たる春を待ち望みたい。

※上記と同じ時期の祭りでバレンタインデーやカーニバル、冬至までの祭りに聖ルチア祭などがあるが、それについては別記事に譲る。

Digiprove sealCopyright secured by Digiprove © 2018 Yoshiko Soraki
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