東日本大震災からおよそ5年、2016年春に熊本地震が起きた。時間がたつにつれ、東日本大震災の教訓が生かされておらず、ほぼ旧態依然の防災対策しか行われていないという状況が明らかになってきた。南海トラフ巨大地震のリスクを抱える日本が今後の災害で無駄死にする人を減らすためには、今度こそ本気の対策が求められる。国・行政側と、災害弱者当事者側に分けて考えてみたい。
災害弱者について
一般に「災害弱者」と呼ばれる人たちは、政府による正式な用語を使うと「災害対策要配慮者」または「避難行動要支援者」となる。
「災害対策要配慮者」とは、政府の定義によれば、防災施策において特に配慮を要する人たちのこと。これには、高齢者、障害者、乳幼児などが含まれる。
「避難行動要支援者」とは、この中でも特に避難行動において特に支援を要する人たちのこと。平成25年(2013年)の災害対策基本法一部改正により「災害時要援護者」から名称変更され、該当する人々の名簿(避難行動要支援者名簿)作成が義務づけられた。
これに伴い、避難行動要支援者名簿の作成・活用に関する具体的手順を盛り込んだ指針も公開されている。
避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針(平成25年8月) - 内閣府 http://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/youengosya/h25/hinansien.html
しかし、行政側がこの指針に従ってきちんと取り組みを進めているかといえば、残念ながら現実はそうではない。熊本地震が起きたことによって、さまざまな対策が滞っていることが明らかになった。
熊本地震における災害弱者対策の現状
避難所に入れない人に物資が支給されなかったケース
以下は、本当に胸が傷んだニュース。この記事を書くに至った発端は、Twitterでこのニュースを目にしたことだった。
発達障害者「配慮を」=避難所入れず物資困窮 -家族ら、無理解を痛感・熊本地震:時事ドットコム http://www.jiji.com/jc/article?k=2016042600039&g=soc
被災による環境変化に対応できない発達障害の人は、共同生活になじめずパニックを起こしたり、大声を上げたりすることがある。制止や叱責が混乱を助長する場合もあり、周囲の理解と支援が必要だ。
「『物資が欲しければ避難所に入ればいい』と門前払いされた。入れないから苦しんでいるのに」。発達障害の息子(15)がいる熊本市の岡田丈二さん(50)は悔しそうにつぶやいた。16日未明の本震でライフラインが止まったが、地震におびえ落ち着きをなくした息子を見ると、周囲への迷惑が不安で避難所に行けなかった。
自宅の備蓄が底を尽き、助けを求めた避難所で掛けられたのは「一人一つ、平等なので欲しければ並んでください」という言葉。息子連れで長時間並ぶのは不可能で、手ぶらで自宅に戻った。
避難所運営では「平等」が非常に重視される。しかし、健常者と違った特性を持った人たちに必要なのは「公正」な対処なのだ。担当者の対応はあまりに知識不足で残酷だったと私は思う。
生かされていない東日本大震災の教訓
今回調べてみたところ、東日本大震災でのケースを詳細に聞き取り調査した報告書や、調査をもとに作成された災害弱者向けの充実した避難・対応マニュアルが複数出てきた。
〜災害の発生に備えて〜 東京都における障害者団体調査の結果 (東京都福祉保健局障害者施策推進部 平成24年6月) http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2012/06/DATA/60m6p300.pdf
2011.3.11 東日本大震災を受けて 自閉症の人たちのための防災・支援ハンドブック ―自閉症のあなたと家族の方へ― (社団法人 日本自閉症教会) http://www.autism.or.jp/bousai/bousai-hb-honninkazoku.pdf
2011.3.11 東日本大震災を受けて 自閉症の人たちのための防災・支援ハンドブック ―支援をする方へ― (社団法人 日本自閉症教会) http://www.autism.or.jp/bousai/bousai-hb-siensyayou.pdf
聴覚障害者 災害時初動・安否確認マニュアル (財団法人 全日本ろうあ連盟) http://www.jfd.or.jp/info/2010/teq/p018/1-shodou-anpi-manual.pdf
災害対応マニュアル てんかんのある人と家族・支援者のための防災ハンドブック (社団法人 日本てんかん協会) http://www.jea-net.jp/files/use_manual.pdf
上記の資料はそれぞれかなりの情報量。読んでいるだけで胸が痛むようなケースがたくさん紹介されていたし、それをもとにした非常に説得力のある要望や対策案がたくさんちりばめられていた。これらを多くの人が真剣に受け止め、周知徹底し、具体的な対策を続けていたら、これらの資料の発表から長くて4年程度経っている2016年春現在、かなり理想的な災害対策システムができあがっていたのではないだろうか。
しかし、熊本地震が起きたいま、状況はどうだろうか? 私には正直、東日本大震災のときから何かが大きく変わったようには思えない。そもそも、上記の貴重な資料の存在それ自体を、私たちのうちどれだけの割合が知っていただろうか? 国や自治体は、もっと真剣に周知徹底と対策に励むべきだったのではないだろうか。
いまが、日本中が「本気を出す」最後の機会
こんなことはあまり言うべきではないのかもしれないが、個人的には「今回の熊本地震が起こるまで、国や行政の側にとって、地震災害は結局のところ『他人事』であったのではないか」という感想を持ってしまった。
九州には火山が多く、しょっちゅう山が噴火したり灰が降ったりしているが、ここ数十年、地震はあったとしてもせいぜい震度1や2というのが大半だったようだ。どこか、「九州は地震災害とは無縁」、国民の側にも、国や行政の側にも、そんな過剰な安心があったのではないだろうか。
ただし、あえて逆にとらえれば、熊本地震の発生は、日本中の人たちが危機感を持つ最後のきっかけとなりうるとも言える。「揺れないはずのところにも地震災害は起こりうる。安心してはいられない」、こういった印象を、今回多くの人が抱いたのではないだろうか。
過ちをこれ以上繰り返してはいけない。私たちは南海トラフ巨大地震の大きなリスクを抱えているのだ。これ以上、救えたはずの命をみすみす失ってしまうようなことの繰り返しは避けなければいけない。
「一時災害を生き残った人が避難生活の中で死んでしまう」ケースを減らすための備え
以下、せっかく最初の災害を生き残った人がその後の避難生活の中で対応のまずさによって亡くなってしまうようなケースを防ぐにはどんな対策が必要かを考えていきたい。国・行政側と当事者側に分けて考えていく。
※当方発達障害当事者であるため、どうしても情報源が発達障害系に偏ったものになっているが、その点はお許しいただきたい。
国・行政側
最低限のゾーニング意識の徹底
東日本大震災、熊本地震の避難所でのケースをいろいろ見聞きしていて、ゾーニング意識の欠落によって必要以上のトラブルが起こっているように感じた。
- 列に並べない特性や症状のある障害者(身体・精神ともに)が列に並ばずに、または個別に物資提供を受けるところを見た周囲の健常者が不公平感を抱いた
- 大声を出してしまう、暴れてしまうなどの傾向のある精神障害者や認知症患者に、周囲の子どもや家族連れなどが恐怖心を抱いた
- 年齢・性別問わず雑魚寝状態の避難所で、女性が男性から性的被害を受けた
- 赤ちゃんや子どもが泣いたり騒いだりするため、それを連れている保護者が肩身の狭い思いをした
ゾーニング意識の欠けた避難所運営が招く不幸というのは、災害弱者の側が避難所から排除されるケースだけではない。災害弱者と健常者を混ぜこぜに同じスペースで生活させることによって、健常者の側が我慢を重ねたうえ、耐えられなくなって自ら避難所を出ていくというケースだってありうる。
結果的に、車中泊や、倒壊しかかった自宅での生活に追い込まれる人が増え、エコノミー症候群や家屋倒壊などで亡くなる人も増えることになる。
今後は、特性(障害・症状など)や属性(年齢、性別、生活スタイルなど)などでそれぞれ避難スペースや避難所を分けることを徹底していくべきだと思う。学校であれば、教室や廊下ごとに入れる人を分けるという対応が可能なのではないだろうか。
人はひとりひとりが特性も属性も違い、快適と感じる生活スタイルも違う。こうしたそれぞれまったく違った個人が、災害という非常事態のなかで突然に一律の集団生活を強いられれば、誰だってストレスを感じるのは当然だ。
互いに接触させさえしなければ起こらないような摩擦・トラブルは、ゾーニングによってできるだけ避けるべきだ。こうした対応がひいては、人命を守ることにつながるのだ。
災害弱者に対して、普段から二次(福祉避難所)の周知徹底を行なうことも大事なことだ。
災害弱者に関する基礎知識の普及
熊本地震では、行政の避難所・物資提供サービスを運営する担当者の、災害弱者に対する知識があまりに不足しており、それを憂えた当事者側が避難所入所を諦めるケースが多かったように思う。冒頭に紹介した記事もこのケースに該当するだろう。
また、視覚・聴覚障害者や発達障害者向けの情報保障のためのコミュニケーションツール(メガホン、拡大読書器、点字器など)の普及も不十分なようだ。平成24年(2012年)の東京都福祉保健局の調査によれば、75%の避難所において、こうしたコミュニケーションツールの用意がなされていなかった。(こちらの10ページ参照)
上に紹介したように、災害時の災害弱者への対応方法について詳細に解説するマニュアルが複数出ており、それらはネットでも用意に参照可能だ。しかし熊本地震での現状を見ていると、少なくとも今回の被災地近辺において、行政の担当者が普段からこれらを熟読したり、詳しい研修を受けたりして十分な知識を身に着けていたようには思えない。
行政側には、あらためて災害弱者対応についての研修を徹底し、災害対応を担当する職員に十分な基礎知識を身につけさせてほしい。
災害弱者参加型の災害対応システムの整備
実際に災害が起きたときに災害弱者に対してきちんと実質的な助けになるシステムを作り上げることが大事だ。
- 障害者団体との協力体制を構築しておく
2012年の東京都福祉保健局による「区市町村における災害時要援護者に関する取組状況調査」によると、民間団体との間で協力体制を構築している市区町村の割合はたった2%だった。(16%が未回答、81%が「構築していない」。詳しくはこちらの3ページ)
- 災害弱者も巻き込んだ避難訓練を定期的に開催する
これは災害弱者の訓練になるだけでなく、対応する行政職員や民間団体スタッフの訓練にもなる。障害者団体の声として、「障害者が参加する防災訓練を実施してほしい」という意見が実際にあった(こちらの6ページ)。
避難行動要支援者名簿を活用できる体制の整備
2012年の東京都福祉保健局の調査では、「避難行動要支援者名簿」の作成が済んでいない市区町村は23%、避難支援個別計画の作成が済んでいない市区町村は34%だった。およそ3割の市区町村が、災害時要援護者名簿を活用できておらず、災害時の迅速な避難に役立てることができていなかったことになる。(詳細はこちらの5ページ)
こちらの記事は、2015年12月に行なった調査の結果についてのもの。
災害時要支援者名簿:事前把握、55%できず - 毎日新聞 http://mainichi.jp/articles/20160116/k00/00m/040/173000c
- 当事者への広報徹底
まずは災害弱者への広報の徹底だ。私は精神障害者保健福祉手帳を持つようになって数年になるが、住んでいる地域の自治体から「災害時要援護者名簿に登録してください」などといった広報を受けたことはない。
個人情報保護の観点や、自分の障害を周囲に知られたくないなどの考えから名簿への登録を行わない人も多いようだが、そもそも名簿の存在を知らなければ、登録するかしないかを選ぶこともできない。
2016年5月現在、私の環境で「避難行動要支援者名簿」でGoogle検索すると、「登録してください」という内容のページにはなかなかヒットしない。2ページめに行けば各自治体サイトの中の該当ページらしきものが複数ヒットするが、全国的な情報を一括したような、知識のない人でもアクセスに至りやすいサイトは見当たらなかった。
たとえば「死にたい」で検索すると内閣府などのキャンペーンページがトップ近くにヒットするが、これと同じように、SEO対策などを綿密に練り込んだ全国一括のキャンペーンサイトを作ることが必要なのではないだろうか。
個人情報保護などの観点から登録を迷っている人にも親しみや安心感を持ってもらえるように、お金をかけてイメージキャラクターなどを作ってみるのもいいだろう。
- 活用システムの整備
せっかく名簿を充実させても、避難の個別計画の作成まで至らないのであれば不十分だ。民生委員などによる登録者への詳細な聞き取りと個別計画作成の流れを整備していくことが必要だ。(こちらの政府の指針2ページにも書かれている)
- マイナンバー制度の活用
せっかくマイナンバー制度が動き出したのだから、災害対策にもマイナンバーの情報を有効に生かすことを考えてはどうかと思う。
例外ケースを想定したうえでの物資配給制度の整備
熊本地震では、避難所に入れない=食料などがもらえない、というケースがみられた。
避難所をどう運用しても、避難所からこぼれてしまう国民は出てくると思われる。それを「例外だから対応は無理です」と言っていたら、最悪人が死んでしまうことになる。
だから、例外ケースをあらかじめ想定のうえ、これにも対応できる救済策を用意しておくことが肝要だ。「緊急時のみ使えるチケットをあらかじめ配布しておく」などを考えてみたらいいのではないだろうか。
当事者側
残念ながら、国や行政が動くのにはとても長い時間がかかる。でも、災害はそんな人間界の事情を待ってはくれない。当事者側も当事者側で、いろいろ想定したうえで最大限の備えをしておくことが必要になってくる。自分たちがどのような避難生活を送りうるかを想定し、それを乗り切るための情報・物質・社会面での備えをしておこう。
避難行動・避難生活の想定
家庭の生活スタイルやメンバーの体調、障害の程度などによって、災害発生時にどこで過ごすかは変わってくるだろう。自宅で踏ん張るのか、車中泊するのか、テント泊するのか、避難所に入るのか、それとも親戚や知人などのツテを頼って疎開させてもらうのか。いろいろな避難生活を想定しておこう。
そしてその想定をもとに、必要なグッズを揃えたり、疎開をするなら疎開先の人ときちんとあらかじめ連絡をとってお願いしておくなどする。
そもそも避難せざるを得ない状況をできるだけ避けるために、家庭内での地震対策(耐震工事、家具止めなど)もしっかり。
普段からの周囲とのかかわり
一般の健常者にとっては、障害者というものがなかなかよくわからないもの。近所の人たちと普段から顔の見える関係を築き、障害についてというよりも、「この人はどんな人間で、どういったことが苦手で、どんな支援を必要としているのか」を自然と把握してもらえるようにしておくとよいだろう。
差別を受けたり迷惑をかけたりするのではないかと躊躇するかもしれないが、誰しも、交流のない人間のことは怖いし、信頼や手助けもしづらいものだと思う。むしろ積極的に出ていって地域の人たちと交流していくほうがいろいろと近道なような気がする。
目に見えるSOS発信手段の入手・作成
発語やコミュニケーションに困難を抱えている障害者などが災害時に助けを求められるような、「○○カード」「○○手帳」「○○ブック」の類は大小の団体から複数出ており、ネットからダウンロードできる。
小さな折本にしていつも携帯できるもの↓
助けてカード (日本自閉症協会) http://www.autism.or.jp/bousai/kaitei/help-card.pdf
300円で販売中↓
災害時要援護者ワッペン 知的障害者・自閉症者向け (NPO法人ぴーす) http://ps-poche.shop-pro.jp/?pid=74648166
東京都主催の、目に見えない障害を持った人が支援を求めるカード「ヘルプカード」作成ガイドライン↓
ヘルプカード作成ガイドライン (東京都福祉保健局) http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/card.files/1helpcard_guide.pdf
上記の「ヘルプカード」のガイドラインに沿って作られた、バッグなどにつけられる樹脂製のマーク「ヘルプマーク」は、東京都内の各駅を中心に配布されている。なお、郵送での対応はしていない。情報サイトはこちら↓
ヘルプマーク (東京都福祉保健局) http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/helpmark.html
赤と白でできたこのマークは目を引く。私は東京都在住ではないが、持っていないよりは持っていたほうがよかろうと、手に入れて非常持出し用のリュックにつけてある。
「ヘルプカード」と「ヘルプマーク」って知ってる? - NAVER まとめ http://matome.naver.jp/odai/2140791828294501701
ヘルプマーク・ヘルプカードの認知を広めようというプロジェクトもある。
ヘルプマーク・ヘルプカード全国認知&普及プロジェクト https://www.facebook.com/helpmarkandhelpcard/
多数のサポートブックDL先が一箇所にまとめてある↓
発達障害・自閉症の人のためのサポートブックDL先のまとめ http://support-book.net/
サポートブックがDLできる、わかりやすいサイト↓
サポートブック『うぇぶサポ』 https://support-book.jp/downroad.html
その他、東京都杉並区では、避難行動要支援者名簿に登録した人に、個人支援計画を書いた用紙を入れた筒と、支援が必要なことを示すシール(玄関などに貼る)が配布されているとのこと。
上記は発達障害系を中心にまとめたが、このほか、「それぞれの疾患名+災害 カード」などのキーワードでネット検索すると、探している疾患の患者のための連絡カードが見つかるかもしれない。少なくとも、てんかん患者、オストメイト設置者、腎臓病患者、透析患者、聴覚障害者用の災害時用カードや手帳がある様子だ。(こちらの13ページ参照)
服薬情報の管理・把握
熊本地震では、ふだん日常的に服薬している人の服薬情報をたどることができず、避難所などでの一時処方にかなりの支障をきたしたとのことだ。
熊本地震で再認識される「おくすり手帳」の重要性…災害時の備え、今こそ確認を https://answers.ten-navi.com/pharmanews/6672/
熊本地震を経て、「おくすり手帳があれば処方箋なしでも持病の薬を処方可」ということになったので、ぜひ「おくすり手帳」の情報はいつでも把握・提示できるように備えておきたい。
- 外出時には必ずおくすり手帳を持ち歩く
- おくすり手帳アプリなどで服薬情報をオンライン化しておく
こうした対処をとっておくことを強くおすすめする。
おくすり手帳アプリは最近かなり多く出ている。2016年5月現在、Google検索でトップヒットとなるのはこちらのアプリ。iPhone版もAndroid版もある。
日薬eお薬手帳 | 電子お薬手帳 http://www.nichiyaku.or.jp/e_okusuritecho/howto.html
支援団体・機関との連絡体制の整備
普段から、支援を受けている団体・機関とよく打ち合わせして、災害時にしてもらう対応などを決め、把握しておくことも大切だ。冒頭に紹介した記事内でも、国や行政が対応してくれなかったケースに対してきめ細かな対応に奔走していたのは、当事者同士や支援団体で構成されているコミュニティだった。
同じ境遇の人から相談を受けた古木満雄さん(63)は、発達障害を持つ次男を施設に預けて支援に奔走。同市の支援センターに掛け合い、何とか回してもらった物資を障害者のいる家庭に配った。センターもそこで問題に気付き、ようやく21日に物資を受け取れない人向けの配給を始めた。
避難行動要支援者名簿への登録
住んでいる自治体の役所に問い合わせするか、「避難行動要支援者名簿」+自治体名 でネット検索して調べ、名簿に登録しておこう。
個人情報漏洩が心配だったり、自分やその家族が障害を持っていることを人に知られたくない、などと抵抗感を覚える人もいるかもしれないが、命を守りたいのならぜひ「背に腹は代えられない」という意識で登録しておくことをおすすめする。
いまこそ対策・備えを
日本の多くの地域に非常に深刻な被害をもたらすと想定されている「南海トラフ巨大地震」が起こる可能性は、かなり高いとされている。
どうか日本の多くの人に強い危機感を持ってもらい、救える命は少しでも救えるような対策や備えをしておいてもらいたいと思う。