※訂正: 私が使っているマインドマップソフトをFreeMindと書いていましたが、正しくはXmindです。本文も直しておきました。お詫び申し上げます。
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ワーキングメモリが小さいASD者
あなたやあなたの周りの発達障害当事者には、以下のようなところがないだろうか。
- せっかく沸いたアイデアも、すぐに気が散ってどこかに消えてしまう
- 常に頭の中が散らかっている感じで、考えが整理できない
- 周囲から「本当は頭がいいのに怠けている」などと言われがち
- 文章を適切な量にまとめられない(長すぎる、短すぎる→長さの決まっている学校での作文などで低評価がつく)
- 学習や表現といったことに対してなんとなく不全感やイライラがある
私の仮説は、こうした問題はASD者の「ワーキングメモリが小さい」ことが原因で起こるのではないか、ということだ。
ASD圏の人のワーキングメモリは定型圏の人のそれよりも小さいらしい。 ワーキングメモリとは、たとえるなら脳みその中にある作業台のようなもの。これが大きければ大きいほど同時に多くの情報を処理でき、小さければ少ない情報しか作業できない。小さな作業台に無理にたくさんのものをのせると、収まりきらないものが下にこぼれ落ちてしまう。こんなイメージだ。
ASD圏の人はワーキングメモリが小さいので、一度に大きな量の情報を処理することが難しい。これが上記の「(考える力自体はあると本人も周囲も感じているのに)なんとなくうまく考えられない」ことの原因ではないだろうか。
マインドマップで小さなワーキングメモリに対応
マインドマップというのは思考ツールのひとつで、脳の思考回路の構造を模していると言われている。
マインドマップはトニー・ブザン(Tony Buzan)が提唱した思考・発想法の一つ。頭の中で起こっていることを目に見えるようにした思考ツールのこと。 「マインドマップ」という呼称は、英国ThinkBuzan社が商標登録を管理している。
言葉で説明してもわかりにくいと思うので、マインドマップの例を画像で紹介する。
―画像参照元:マインドマップ – Wikipedia
このように、真ん中のキーワードを中心として、放射状にどんどん枝分かれしていく構造になっている。
発案者のトニー・ブザンに忠実なものはもっとグラフィカルで有機的で、私などにはちょっとパッと見グロテスクに見えることがある。
実例はこちらのトニー・ブザン公式サイトへ(英語)。
マインドマップで大事なのは自由連想。思いついたものを既成の枠(リストなど)や思考の枠(こんなアイデアくだらないんじゃないか)に当てはめず、どんどん書きつけていくこと。
ASD者の思考を邪魔しているのは、言語化される前のアイデアの萌芽のようなものなのではないだろうか。これが脳みその作業台の上にあまりにたくさん積もっているので、ともかくこれをどこかに放出してやらないと、進む作業も進まない。
最近流行りの断捨離と同じで、「まずは散らかっているものをいったん全て外に出してしまう」、「そのあと、いるものいらないもの、目的別などに分類していく」わけだ。こうすることで、「散らかった作業台」を抜本的に整理整頓して、「使いやすい作業台」に変えていくことができるのだ。
マインドマップは絵や見た目にこだわらなくていい、思考のデフラグに特化してOK
原案者のトニー・ブザンは非常にグラフィカルなアイコンなどを使い、枝も太く書き込んだり色をつけたりする方法をすすめているが、私はグラフィック面にはほぼこだわらない。大事なのは「まずは思考の萌芽をとことんアウトプットしてしまう」ことだからだ。
具体的な方法はこちらの動画に詳しく解説されていた。
私の場合、1つのテーマについて1つのマインドマップを立て、数時間から数日かけて心のおもむくままに書き続けていると、ある時点で「これで出しきった!なんだかすごくすっきりした!」という、味わったことのない快い感覚が襲ってくる。
おそらくこの状態が、「ワーキングメモリに負荷がかかっていない状態」、「作業台が整頓されている状態」、自分の持っている本来の思考力を存分に発揮できる状態なのだ。
アスペルガー界隈で有名なアズ直子さんも、よくASD者にマインドマップの使用をすすめている。マインドマップは思考ツールとしてASD者に向いているのではないかということを書いていらっしゃるが、私も同感だ。
マインドマップは少なくとも私にとっては、「かゆいところに手が届くような画期的な思考ツール」だった。個人的には、PCに出会ったとき以来の神器との出会いである。PCとの出会いについては以下の記事に詳細を書いている。
マインドマップを使って本来の思考力を発揮しよう
私は、このブログの記事のネタを練るときも、ほかのライティングの仕事で文章の大枠を組み立てるときも、マインドマップで考えている。上に紹介した記事に書いているとおり手書きが苦手なので、マインドマップもPCで作る。
ツールはいろいろあるので、「マインドマップ アプリ」「マインドマップ ツール」などで検索してほしい。無料の範囲でもかなり使えるものがある。
私が使っているのはXmind。書き出しなどに機能制限があり、XMind独自のファイルをPDFなどに変換するには課金が必要だが、jpgに変換するだけでいい場合には無料で十分使える。
本棚を見せるよりも恥ずかしいが、私の記事ネタ用のマインドマップ画面の一部を紹介しよう。
このマインドマップは非常に大きなもので、この部分は現時点で全面積の6分の1ほど。全体の面積は、このブログを続けていくかぎり広がっていく予定だ。
あなたにもぜひマインドマップを使ってみてほしいし、あなたの周囲の困っている人・困っている子どもにも、ぜひマインドマップを紹介してみてほしい。とりわけ、ワーキングメモリの小ささゆえに行き詰まりを感じている小中学生ぐらいの子どもには、絶大な効果を発揮しそうな気がする。学習や表現活動が、苦役から楽しみに変わるかもしれない。
ちょっとしたライフハックで人生の苦しみが大きく軽減するのであれば、試してみない手はない。