なぜ人はトンデモにだまされる? ニセ医学・トンデモ医学のカラクリがわかる本の紹介

この記事の所要時間: 839

反ニセ医学・反トンデモ医学についての記事をいくつか書いてきたが、おすすめの本を集めた記事をまだ書いていなかったことに気づいた。ぜひ参考にしていただきたい。特に1冊めの超入門は強烈におすすめである。

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超入門:「自分の目で見たこと」を信じるのは実はあやうい ―「超常現象をなぜ信じるのか」

まず超入門として、読み物としても楽しめる軽めの1冊を。

人は「自分の目で見たこと」「自分で体験したこと」を信じてしまいやすいが、それは実はとてもあやういことだよ、そのしくみにはヒトの脳みそが生存戦略上身につけてきた「クセ」が関わっているのだよ、ということをとてもわかりやすく例を挙げて解説してくれている一冊。

たとえば、大地震の前には動物が異常行動をする、という都市伝説について、この本ではおおまかに言うとこんな感じで解説している。

「1匹の猫が10年の生涯のうち1回だけ異常行動をすると仮定する。前後に大地震がなかった場合、『変な行動をしたなあ』で済んで忘れてしまうところを、大地震があった場合にはどうしても大地震と紐付けして強く記憶してしまうことになる。ヒトの脳は不安や恐怖を喚起されることについて、なにか合理的な理由を探し出そうとするクセがあるからだ。この強化された記憶が周囲に語り継がれることでこの思い込みは次のさらなる思い込みを喚起していき、都市伝説が形成されていく」

その他、ヒトの脳は点が3つあれば顔として認識しようとするクセがあるとか、UFOという思い込みが先にあると単なるバラバラの光をUFOとしてまとまって認識するとか、それはそれは面白い。

これを1冊読んでおけば、「だってこの目で見たんだから!」という主張からまっすぐ信じこんでしまうに至る前に、ほんの少しでも待ったをかけて検証する視点を保っておくことができるようになる。

この本を読むことの副効用は、自分や他人がうっかり体験をもとに何かを信じこんでしまったときに、過剰に恥ずかしがったりバカにしたりしないですむようになることだ。だって、これはヒトの脳がみな持っているクセなのだから、しかたない。逆にいえば、残念ながらだからこそトンデモはいまだにのさばっていられるのだし、このしくみについて知っておいて気をつけておこうという気持ちにもなるというものだ。

入門:私たちはこんなにも報道に惑わされている ―メディア・バイアス

超入門レベルはおさえている人に読んでおいてほしい入門編はこちら。これを読むと、われわれがいかにメディアによる報道に翻弄されているかがよくわかる。

これは農業・食品・環境が専門の科学ライターが書いた本。

流行っては廃れていく健康・ダイエット食品の情報、やれ牛乳が危険だ、添加物が危険だ、マーガリンが危険だ、オーガニックは安全だ、古きよき日本食は身体にいいだ、それはそれはいろいろメディアは報道するが、この本ではこうした一連の話題について、どういった背景があってどういった意図で報じられ、誰を利しているのか、何をどこまで気にしたらよいのか、ということを丁寧に解説している。

科学は白か黒かの単純な問題ではなく、ほとんどがグレーゾーンなのに、メディアは白か黒かのわかりやすい情報を報じようとする。消費者側も、白か黒かのわかりやすい情報を欲しがる。これが問題の根本である。まずは白か黒かの断定的な答えを求めるのをやめ、常に懐疑的な目を持つことが大事だ、ということを筆者は強調している。

巻末の「科学報道を見破る十ヶ条」はとてもよい。以下に引用する。

1.懐疑主義を貫き、多様な情報を収集して自分自身で判断する。

2.「○○を食べれば…」というような単純な情報は排除する

3.「危険」「効く」など極端な情報は、まず警戒する

4.その情報がだれを利するか、考える

5.体験談、感情的な訴えには冷静に対処する

6.発表された「場」に注目する。学術論文ならば、信頼性は比較的高い

7.問題にされている「量」に注目する

8.問題にされている事象が発生する条件、とくに人に当てはまるのかを考える

9.他のものと比較する目を持つ

10.新しい情報に応じて柔軟に考えを変えてゆく

初級:権威のある代替医療まで二重盲試験で丸裸 ―代替医療解剖

メディアの報道を丸呑みにしない程度のリテラシーをすでに身に着けており、「二重盲試験」や「プラセボ(プラシーボ)」という用語に親しんでみたいという人にはこちら。

二重盲試験という、科学的に非常に信ぴょう性の高い試験でもって、現代の欧米である程度以上権威のある代替療法4種について、とことんフェアに検証を行なった記録を克明に記したものだ。4つの代替療法とは以下。

  1. ホメオパシー
  2. カイロプラクティック
  3. ハーブ療法

特に面白かったのは鍼。鍼はいままで大規模な二重盲試験が行われてこなかった。なぜなら、「鍼を刺しているふり」をするのが非常に難しいからだ。それでもかなり工夫をして実験や検証を行なったようで、結果どうだったかというと…

現在まことしやかに効果がうたわれており、理屈っぽい私でさえ効果を実感していた非常に多くの疾患への効果は「単なるプラセボ効果」であるといえるらしい。私が購入したのは書籍で、疾患名を全部タイプするのが大変なので、詳細は購入して読んでみてほしい。

鍼の効果についてある程度以上肯定的な結論が出ているのは、「(非常に限られた)ある種の痛みと吐き気」のみで、しかも、報告者は調査の結果、特にこれらの治療をわざわざ鍼でもって行なうことを支持したわけではなかった。なんとまあ。わざわざ鍼を選ぶこともないよってか。

要するに、「中国4000年の歴史」の権威が惹起するプラセボ効果は非常に多くの人に安定的に出現しつづけており、このことによって鍼はいまだに準・標準医療みたいな位置にありえているということらしい。

私は自分が患者としてたくさん鍼灸治療を受けた経験上、鍼の効果はすごく信じていて、一時期鍼灸師になろうと思って鍼灸の専門学校に入ったぐらいだった(1ヶ月通った時点で実家を離れることになり、退学してしまったが)。なのにあの効果が壮大なプラセボ効果だったとは。た、退学することになってよ、よかった…?

この本を読んで多くの人が改めて理解するであろうことは、プラセボ効果の偉大さだ。プラセボ効果はほんとうに人の症状を消失させてしまう力を持っている。人間の思い込みの力は偉大だ。プラセボでもって人生が楽で幸せになるなら、これほどいいことはない、というのもたしかに真理だ。私も鍼治療によってずいぶん助かった日々があった。

でも、プラセボ効果はたとえばガンの症状を感じさせないようにする力はあっても、実際のガン細胞の増殖を止める力はない。だから、ガン患者が運悪くトンデモにひっかかれば、落とさなくてよかったはずの命を失うことになったりする。プラセボの怖さ、それを利用するトンデモのいちばんの怖さはここなのだ。

中級〜上級:懐疑論沼にハマりたい人へ ―「奇妙な論理」、「悪霊にさいなまれる世界」

もっとリテラシーを高め、知的な沼にどっぷり浸かりたいという人には、2巻セットを2つ紹介しておこう。実は以下の本、私は勢いで買ったはいいものの2つとも読了していない。

小さな字がみっちりだ。読み通すには骨が折れるが、知的好奇心のやまないタイプには垂涎ものだろう。チャレンジ精神旺盛な人にはぜひチャレンジしてもらいたい。

【2016年9月24日追記】ニセ医学にだまされないための本

この記事では「なぜ人はニセ医学にだまされるのか」を理解するための本を紹介しているが、読者の方から情報をいただいたこともあり、「ニセ医学にだまされないための本」も数冊紹介しておきたい。

内科勤務医のNATROM先生著の、反ニセ医学本の権威が以下。先生のTwitterはこちら

医療の専門家たちが集まって書いた、子育てにかかわるニセ医学を跳ね返すための本。執筆陣には上記のNATROM先生も参加している。現在かなり売れていて、医療関係者、懐疑論者にも好評の模様。

妊娠・出産に特化した内容としては、メタモル出版の妊娠〜育児関連シリーズがおすすめだ。上の本に参加している産婦人科医の宋美玄先生を始め、日ごろからエビデンスのある情報を発信なさっている小児科医の森戸やすみ先生などが執筆なさっている。

情報をお待ちしています

ほかに関連でおすすめの本があるという人は、ぜひ @decinormal1 まで教えてほしい。随時追加していってもっと充実した記事にしていきたいと思う。

Digiprove sealCopyright secured by Digiprove © 2016 Yoshiko Soraki
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