自分に肯定的な言葉をかけてやるアファメーションは、続けることが最も大事なのだが、続けることこそが最も難しい。アファメーションを続ける方法、楽しく気軽に続けられるアプリ、効果を高めるためのコツなどについてまとめた。
Contents
アファメーションとは何かについては前編を
この記事は、アファメーションについて書いた記事の後編である。アファメーションとは何かについては、前編を参照されたい。
続ける必要のある人こそ続かない…
アファメーションでいちばん難しいのは、「続ける必要のある人こそ続けづらい」というところだ。
むずがゆくて死にそう
アファメーションでは、毎日繰り返し繰り返し自分を肯定し、褒めてやる必要がある。これが、アファメーションの必要度の高い(≒自己肯定感の低い)人にとっては、特に最初はむずがゆい。たいていの場合こういう人の頭の中には「自分のような人間には毎日褒め言葉なんかかけてもらえる権利なんかない」という思い込みが強固にできあがってしまっているので、どうにもこうにもむずがゆいのである。
アファメーションを勧める本では、「書き出して(プリントアウトして・コピーして)目につくところに貼っておいて毎日繰り返し読みなさい、できるだけ音読すること」などということが書いてある。しかし、自己肯定感の低い人にとっては、自分が自分を大事になんかするために何か文言の並んだ紙を机の前やトイレの壁に貼っておくなど、死ぬほどむずがゆいのである。
同居の家族のいる人なら、家族に見られるかもしれない。友人知人を家に呼んだときに見られるかもしれない。きっと笑われる、キモいやつだと思われる…
私の場合、同居の夫は決して私のそういうところを笑わないでいてくれる人なのだが、ともかく自分の中の強固な羞恥心が邪魔してしまって、どうしても実行できなかった。
IT世代には紙モノはハードルが高い
PCやスマホに慣れている世代は、いくらでもリアルタイムに情報の修正・追加ができる作業環境に親しんでいる。これが私が、本で勧められている「紙で張り出しておく」アファメーションの方法に抵抗を感じるもうひとつの原因だった。
アファメーションをより続けやすくし、効果を高め、副作用のリスクを下げるには、自分が日常的に自然と使っている語彙でできた文言を加えていく必要がある。これはいい文言だな、と思ったときにパッと書き加えられるPCやスマホの環境のほうが続けやすいのかもしれないと思った。
続けやすいアプリがある!
というわけで「便利なアプリを探そう、絶対あるはずだ」と思って探してみたら、あっという間にたくさん見つかった。以下に詳しく紹介していく。
アファメーションをつぎつぎ表示してくれる快感アプリ「アファメーション ワークス!」
アファメーションの文言をつぎつぎに表示してくれるアプリはたくさんあったが、これがいちばんシンプルで美しく、使いやすかった。有料だがその価値はあるように思う。
アファメーション ワークス! カテゴリ: ライフスタイル 現在の価格: ¥360
※ちなみに Affirmation Works! のworksはおそらく現在形の動詞だ。Affirmation works! を文として日本語に訳すと「アファメーションは効きます!」ということになる。このアプリ名自体がアファメーションの原則(できるだけ現在形で既に実現しているものとして語る)に沿ったアファメーション文言となっている。
アファメーション ワークス! のアプリ画面写真
アファメーション ワークス!の最大の魅力は、シンプルで心地のよい背景とともに次々にアファメーション文言を表示してくれるところだ。数えていないが、少なくとも10以上とは思われる綺麗な背景と、アファメーション文言をランダムに組み合わせて表示してくれる。次のアファメーション文言に移るには画面をワンタップするだけでいい。
アファメーション ワークス!の使い方
- 唱える:アファメーション文言画面へ
- 管理する:アファメーション文言の追加や削除、非表示の設定など
- インポート:アファメーション文言のインポートやエクスポートができる
- アプリ:アプリについての説明
アファメーション ワークス!の魅力
ワンタップでつぎつぎに1文言ずつ表示されるところがとてもいい。文言の羅列を紙に打ち出して読んでいくよりも、フラッシュカードの原理で映像記憶として頭に刷り込まれやすそうだ。発達障害者の私にとっては特に向いていそうだ(発達障害者には、ワーキングメモリに難があるタイプや視覚支援があると伸びるタイプが多い)。
ランダムにシンプルで美麗な背景が表示されるのもとても楽しい。これで文言を切り替えるたびにシャラーンとか効果音が鳴って、それのオンオフを選ぶことも可能だともっと良いと思う。
タスク達成で謎ポイントが貯められるアプリ「自分ルールポイントプログラム」
『自分ルールポイントプログラム』目標管理、目標達成の習慣化のための記録アプリ カテゴリ: ライフスタイル 2017年1月現在の価格: 無料
自分ルールポイントプログラムのアプリ画面写真
ポイント画面は、無印良品のポイントアプリとよく似ている… 無印の商品と交換できそうな気がしてくる… できないけど…
グラフの下の文言は設定画面で入力した「アファメーション」が表示されている。ここでのアファメーションは自分にかける肯定的な言葉というよりも、「自分との肯定的な約束」というニュアンスと思われる。ポイントがたまったらしていいことを標語のように書いておくとよいのだと思う。
ポイントを貯める画面。左端の「NO IMAGE」となっている部分は、iPhoneのカメラロールに入っている画像ファイルから設定できるが、面倒なので放置している。
ポイントを使う画面。ポイントを何に使うか決めたほうがモチベーションが上がるのだろうが、ポイントがたまるようになるだけでも日常のちょっと億劫なことをこなすモチベーションが上がるので、今のところここの設定は初期のままにしてある。
履歴画面ではカレンダーが表示され、どの日にどのタスクをどれだけこなしたかが見れるようになっている。月表示で1日の枠に表示されるのは2個のタスクまでだが、その日の枠をタップすると詳細情報を見ることができる。
自分ルールポイントプログラムの使い方
ポイントを貯めるには、「貯める」画面上で、こなしたタスクをタップする。
アイコン画像を設定していないのもあってやや見づらく、広告もうざったいが、画面上部分の「このアクティビティでポイントを加算する!!」をタップ。
ポップアップが出るので「加算する」をタップ。
無事に加算が完了。
自分ルールポイントプログラムの魅力
自分ルールポイントプログラムは、日常の何気ないタスク達成に自分で報酬を与えることのできるアプリだ。
自己肯定感の低い人は、自分にご褒美をあげることに慣れていない。特に発達障害者の私は脳の報酬系(※)が弱く、定型発達者と比べて日常のモチベーションの維持に難を抱えていると思われる。そんな私にこのアプリはぴったりだった。
※報酬系:簡単に言うと、何かを達成したときに気持ちよくなる脳内物質を出すシステム。発達障害者には報酬系の機能が弱い人が多いと言われている。
最近は教育や療育、研修などの現場で「ゲーミフィケーション」という概念が使われるようになっている。学習やタスク処理にゲームのような楽しい要素を取り入れることでモチベーションを上げるというものだ。古くはラジオ体操に行くとカードにスタンプを押してもらえたような、そんな方法がゲーミフィケーションである。このアプリも、日常のタスク処理をゲーミフィケーションしている。
効果の高いアファメーション文言を作るための3条件
ここで、より効果の高いアファメーション文言を作るコツについて触れておきたい。
- 自分の普段使っている自然な語彙で
- 確かにそれは本当のことだと納得できることで
- 唱えることで自分が本当に心身楽になるもの
この3条件で選ぶのがコツだ。
「本当に心身が楽になる」とはどういうことか
とはいっても、自己肯定感が低い人はたいがいの場合、「自分が本当に心身楽になるとはどういうことか」がよくわかっていない。緊張していることが多かったり、長いこと自分の本当の気持ちを抑圧しているうちに自分の気持ちをキャッチする力が鈍ってしまっている人が多いからだ。本当に心身が楽というのはたとえばこんな感じだ。
- 心拍数が多いよりも少ない状態
- 痛みや凝りが軽くなっている状態
- 呼吸がゆっくりスムーズにできる状態
- 場合によっては自然と深呼吸のようなものが出てくる状態
- 口元が自然とゆるんで微笑みそうになる状態
- 身体の末端(手足)が温かい状態
これは全て、いわゆるストレス状態にさらされた心身反応の逆を言っている。精神的ストレスの起源は命の危険にさらされるストレスだ。命の危険にさらされたとき、人も動物も、「逃走または闘争」でもって自らの命を守るために、交感神経を活性化させた。交感神経は戦うか走って逃げるかの準備をするために心拍数と呼吸数を上げ、全身の筋肉を緊張させ、末端の血流を抑えて心肺に十分な血流と酸素がいくようにしたのだった。リラックスしているときにはこの逆の反応が起こると思えばいい。
自分の身体と対話し、身体への意識を高める作業は、マインドフルネス瞑想のジャンルでもよく実践されている。詳細はこちらの過去記事で。
周囲からアファメーションの種を探そう
自分で考えたアファメーション文言もいいが、できれば信頼できる人が言ってくれた文言も加えていってみよう。自己肯定感の低い人は、人から言われたことのほうに説得力を感じる場合も多いからだ。
あなたをよく理解してくれ、大切に思ってくれている知人・友人、パートナーやかかりつけの医師、支援者などなど。彼らがあなたに対して、あなたの良い行為や人間的な美点を指摘してくれた言葉や会話、なるほどと思える楽観的な真理があったら、ぜひ文言に加えてみよう。ネットで見かけたなるほどと思う発言でもいい。
以下には、私が周囲からの言葉や彼らとの会話から採用した文言を一部紹介する。
・友人から
「私には自分と周囲を比較する必要はありません」
・ネットから
「短期的ストレスには良い側面もあります」
・医師から
「寝て見る夢は夢に過ぎません」
・夫から
※恥ずかしいので自粛 //// ※
「自分で自分の世話をする」ということ
自己肯定感の低い人はほとんどの場合、「自分で自分の世話をする」ことに慣れていない。疲れていても寂しくても、ご褒美がもらえなくてもひたすら努力し周囲に尽くすように刷り込まれてきた人が多いからだ。
けれど本来、人は世話され、受け入れられ、承認され、褒められるべき存在なのだ。
アファメーションをすることそれ自体ももちろん「自分の世話をすること」だが、アファメーションの文言を考えること、アファメーションを続けたり、その効果を高めるための方策をあれこれ考え試してみることも、「自分の世話をすること」だ。
アファメーションに触れることで、自分で自分の世話をすることに少しずつ、少しずつ慣れていこう。少しずつ、ほんの少しずつ、毎日を生き延びるのが楽になっていくはずだ。
