きょう、死にたい子へ

この記事の所要時間: 938

きょう、死にたい子へ

ごめんね、おばさんには、あなたがどうして死にたいのか、ちゃんとわかってあげることはできないかもしれません。

でもね、おばさんもあなたぐらいのころ、いつも死にたかったの。だからおばさんは、あなたを知らない子のように思えない。かってなきもちだけど、そうなんだ。

自殺してしまう前にちょっとだけ、おばさんの書くことを読んでみてほしいの。10分ぐらいしかかからないから。

いままでがんばって何年も生きてきたんだから、あと10分だけのばしても、そんなに変(か)わらないでしょう? 

人生のさいごに、知らないおばさんにちょっとだけしんせつをするつもりで、読んでみてほしいんだ。

おばさんもひとりぼっちだったよ

あなたは、自分がひとりぼっちだって感じてるかな? おばさんもそうだったんだよ。

おばさんは、学校では、クラスメートからも先生からもいじめられて、いつもひとりだった。家にはこわくて冷(つめ)たいお父さんと、病気(びょうき)がちなお母さんがいたし、おばさんのおばあちゃんは、おばさんのことをいじめてたの。

おばさんにはお兄ちゃんもいたけど、お兄ちゃんはおばさんに、「おまえのことなんかきらいだ」みたいなことをしょっちゅう言ってたんだ。

学校にも行きたくなかったし、家にも帰りたくなかった。だっておばさんには、どっちにも居場所(いばしょ)がなかったから。

子どものことも、おとなのことも信じてなかった。だあれも、おばさんのことをわかってくれなかった。

おばさんは、まるで世界にたったひとりぼっちで生きてるみたいな感じがしていたんだ。

「私なんて死んだほうがいい」って思ってた

おばさんは、「私みたいな子が生きてたら、みんなのめいわくになるだけなんだ」って思ってた。「だから私は死んだほうがいいんだ」って。「どうせ私が死んでもだれも悲(かな)しまないし」って。

だってね、みんなが言うんだもの。「死ね」「ふけつ」「きもい」って。おばさんが教室にはいっていくと、みんながサーッとよけるんだ。そうじのときにみんなの机をさわると、「わーっきたねえ!えんがちょ!」ってされるんだ。

先生は、なにもしてないのにおばさんのことをおこって、かみの毛をつかんでひきずりまわしたり、あざができるほどつねったり、さむい廊下(ろうか)になん時間も立たせたりした。

お父さんとお母さんに「学校にいきたくない」っていったら、お父さんは、「学校に行かないとお前はしょうらいホームレスになる。だから休んじゃだめだ」って言った。お母さんは泣きだして、それから3日もねこんでしまったの。

だから、「みんな私がわるいんだし、生きてるとつらいことばっかりだし、やっぱり私が死ねばいいんだ」って思ったんだ。

あなたも、もしかして同じようなきもちなのかな? おばさんは、そう思いながらこれを書いているよ。

わかってくれる人は、家や学校じゃないところにいた

苦しいなかでちょっとだけよかったことは、おばさんがほんとうに苦しくなったのが小学校の卒業(そつぎょう)まぢかだったということ。やっとのことで小学校を卒業して、私立(わたくしりつ)の中学校にいくことになって、おばさんはやっと、クラスメートや先生からいじめられなくなったんだ。

中学生になったおばさんは、それでもつらかった。自分のことがきらいできらいでしょうがなかった。ときどき死にたくてたまらなくなったの。

きっかけはなんだったのかもうおぼえていないけれど、おばさんは、死にたくなったときにいろいろな電話相談(でんわそうだん)に電話をかけるようになった。いまとちがって、子ども用のケータイとかはなかったから、こっそり家の電話から電話をかけたの。

そこには、学校の先生や、お父さんお母さんとはちがったおとながいたんだ。

そこのおとなたちは、おばさんのかおを見たこともない知らない人なのに、おばさんにとってもやさしかった。おばさんが泣きながらいうことを、おこったりわらったりしないでうんうんってきいてくれたんだ。

おばさんはとってもびっくりした。「おとなっていうのは、私がなにかいうたびに、おこったりばかにしたりする人たちだ」って思っていたから。おばさんは電話相談に電話したことで、「学校や家じゃないところには、やさしいおとなはいるのかもしれない」って思えるようになった。

ひとりぼっちじゃないって思えた

電話相談では、おばさんの話をきいてくれる人は何人(なんにん)もいた。それはおばさんにはとってもふしぎなことだったよ。でもおばさんはもう、「私はこの世(よ)でたったひとりきりで生きてる」とは思わないですむようになったの。

「この世でたったひとりだけでも、私の話をきいてくれる人がいるなら、私はもうひとりぼっちじゃない」… おばさんはそんなふうに思うようになったんだ。

かおも見えない知らない人にしか話をきいてもらえないことは、やっぱりさびしいよね。おばさんもさびしかったよ。ほかの子どもたちには、とおくに電話なんかかけなくても、お友だちや、やさしいおうちの人がいたから、うらやましかった。

でも、あなたが今日もなんとか死なないでいて、あした電話相談に電話をかければ、あしたもきっとだれかがあなたの話をきいてくれるんだ。そう思えば、ちょっとだけマシなきもちになってこないかな?

それでも死にたいあなたへ

そうか、それでも今日、死にたいんだね。これを読みおわったら、自殺のじゅんびかな?

そんなたいへんなときに、おばさんの話を10分も読んでくれてありがとう。あなたはやさしい人なんだね。やさしいから、死のうとしてるのかもしれないね。

10分もしらないおばさんにつきあってくれたあなたは、とてもしんせつな人だよ。

あなたはしんせつでやさしいから、自殺するときにもきっと、いろんな人に手紙や遺書(いしょ)をかいたりとか、やらなきゃいけないことがたくさんあるんじゃないかな。

あなたは子どもだし、あなたのことをだれもわかってくれなかったかもしれない。だけどあなたは、人生のさいごまで、まじめでやさしい、りっぱな人。

まじめでやさしいあなたはきっと、「どんな手紙や遺書をかいたら、あいての人たちにもっときもちをつたえられるかな」ということもいっしょうけんめい考えるよね。死んでまでいいたいことなんだから、ぜったいにしっぱいできないもの。とことんいいものにしたいよね。

だからって、学校の人やおうちの人に「こんなんでどうかな」なんてきけないよねえ。「死んじゃだめだ!」っておこられるにきまってる… うーん、こまったなあ。

電話相談の人に相談してみよう

ねえ、おばさんね、いい方法(ほうほう)を思いついたよ。電話相談の人に相談してみるのはどうかな? 電話相談の人は、あなたが死にたいっていってもおこらないよ。「そうか、死にたいんだね」って言ってくれるはず。きっと、どんな手紙を書いたらいいかの相談にものってくれるよ。

あなたが考えているのはとてもだいじなことだから、何回(なんかい)かにわけて相談して、じっくり考えてみよう。どうやったらいちばんいいのかなって。

相談できるところはたくさんあるよ

「じゃあ、どこに相談したらいいの?」って? 実は、相談電話ってすごくたくさんあるんだよ。あなたがかけたいと思えるところをえらんでかけてみよう。

■ チャイルドライン

子どもの話をきくのがじょうずなおとながたくさんいるのはここだよ。

電話番号(でんわばんごう):
0120-99-7777
※ケータイやPHSからもタダだよ。 相談できる時間: 毎週月曜日~土曜日 ごご4時~ごご9時 ※学校がおわったくらいの時間からねるまえぐらいの時間だね。 日曜日はやってないから気をつけよう。

せつめい:
http://www.childline.or.jp/ 

チャイルドラインでは、子どもをまもるために4つのやくそくをしているよ。

ヒミツはまもるよ
どんなことも、いっしょに考える
名まえは言わなくてもいい
切りたいときには、切っていい

チャイルドラインのサイトより

■ いのちの電話

いのちの電話の人は、すぐにでも自殺してしまいそうな人の話をきくのがじょうずだよ。

ここには、あなたと同じように「死にたい」と思っているおとなも、たくさん電話をかけてくるんだ。おばさんも、おとなになってからかけたことがあるよ。

「東京いのちの電話」の電話番号:
03-3264-4343

「東京いのちの電話」にかけられる時間:
毎日24時間
※学校がある日でもない日でも、いつでもまる1日やってるよ。おうちの人にみつからないようにこっそりかけるのがしやすいね。

ちゅうい:
電話代がかかるよ。あんまりたくさんかけていると電話代が高くなって、おうちの人に見つかることがあるかも。
・大人気なので、つながりにくいことがあるよ。なんどかかけてみたり、↓のリストから、べつの「いのちの電話」にかけてみよう。
なまえはいわなくてもいいよ。ヒミツもまもってくれるよ。チャイルドラインとおなじだね。

東京都以外のいのちの電話の電話番号はここ↓にのってるよ。たくさんあるから、あなたのおうちの近くの番号もきっとみつかるよ。
かけられる時間は、場所(ばしょ)によってちがうから気をつけよう。
http://www.find-j.jp/zenkoku.html

しゃべるのがニガテな人には、ネットの掲示板(けいじばん)があるよ

電話相談ができないもいるよね。しゃべるのがニガテだったりすると、電話相談はつらい。おばさんもしゃべるのがそんなにじょうずじゃなかったよ。おうちで電話をしてるとおうちの人にきかれるのが気になったりもしたので、おばさんが子どもだったころにもこういうものがあったらよかったなって思うな。

ここ↓は、学校にいけない子や、むかし学校にいけなかったおとな、それから、学校に行けない子をそだてているおとながあつまるところ。LINE(ライン)みたいな感じで、書き込むとだれかがへんじをしてくれることがある。いいなかまがみつかるといいね。

不登校 不登校経験者・保護者のための不登校専門のいばしょづくりサイト http://www.ibasyo.jp/qa/list-02.html

しなきゃいけないじゅんびはもっとたくさんあるよ

さあ、手紙や遺書はばっちり書けたかな? そしたら、もうじゅんびはおわりだって思ってる? 

ううん、人生のさいごには、やらなきゃいけないことはもっともっとたくさんあるんじゃないかなって、おばさんは思うよ。

そうだなあ… きれいな夕日(ゆうひ)や、きもちのいい風、小鳥の声、子ねこや子うさぎのふわふわした毛、子いぬのくりくりした目なんかのことを、しっかり見たり感じたりするのもだいじだよね。

それから、あなたの好きないろんな自然の風景や、大好きな食べものやなんかも、「これでもうじゅうぶんだ! にどと味わえなくてもぜったい後悔(こうかい)しない!」とはっきり思えるまで、ねんいりに味わっておくのもいいね。

つらい人生だったけど、せっかく人間に生まれたんだもの。つらかったぶんは、とりかえさなかったらソンじゃない?

死んでしまったら、「ありがとう」のきもちも、「このやろう」のきもちも感じられなくなるよ。だから、生きているうちに、いろんなものへの「ありがとう」や「このやろう」をしっかり感じよう。手紙や絵、音楽やなんかの作品にしておくのもいいかもしれないね。

読んでくれてほんとうにありがとう

ここまで読んでくれた、しんせつでまじめなあなたへ。

しらないおばさんの話にここまでつきあってくれてほんとうにありがとう。

あなたがあなたの人生を少しでもすてきにできるように、おばさんは毎日、いっしょうけんめいいのっているよ。

こんなかわったおばさんがよのなかにひとりはいたこと、どうかおぼえていてね。

Digiprove sealCopyright secured by Digiprove © 2016 Yoshiko Soraki
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